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経営志談(3)自立支援で、本来のやりたいことを実現するために。

専務取締役の三重野です。

今回は、前回に続き、私たち介護付きホームの業界団体である、一般社団法人全国介護付きホーム協会の会報誌に掲載されました、私のインタビュー記事です(2018年5月号より)。

――個人の欲求を上手に引き出すための仕組みにはどのようなものがあるのでしょうか。

三重野 例えばRDR(retrospective data research:レトロスペクティブデータリサーチ)という個人年表づくりをしています。認知症高齢者研究所の羽田野先生に教えていただいた方法です。いろんな場面で知りえたその方の過去の情報を一つの表に集約し共有することで、その方の全体像をスタッフみんなで共有します。

このほか、最近特に重要視していることが「地域」というキーワードです。先行事例では、東京都武蔵野市にある介護付きホーム「アライブ武蔵野御殿山」で、地域の方々にホーム内の交流スペースを提供し、イベントを催す取り組みを開始しています。ここでは専任の「地域コーディネーター」を配置しています。具体的な事例を紹介しますね。認知症でうつ症状の出ている女性のご入居者がいらっしゃいました。彼女の背景を掘り下げる中で、朗読会の全国大会で優勝した過去を持つというエピソードが判明しました。そこで、地域コーディネーターの働きかけで、地域の保育園児を招き朗読会を開くことになりました。ご本人ははじめ、しぶしぶ準備されたご様子でしたが、いざ子供たちと向き合った瞬間、非常に流暢に朗読を始められたそうです。その光景は、日々の生活の様子をよく知るスタッフも見たことのないお姿でした。その女性は今では、保育園児の来訪を楽しみにしていると聞いています。

また、地域の方との関わり、ホームの中に留まらない人間関係はご入居者だけでなく、スタッフにとっても居心地の良い環境となっており、このホームを訪れるといつも活気を感じることができます。

ここで手応えを感じ、昨年10月に東京都渋谷区に開設した「アライブ代々木大山町」では、東海大学の観光学部と地域づくりのコラボレーションを計画しています。介護付きホームを地域づくりのインフラとして役立てられるよう挑戦しながら、若い世代との関わりに期待をしています。

――「地域との関わり」は介護付きホームの役割をポジティブに発信していくためにも重要なキーワードと言えそうですね。

三重野 国が描く地域包括ケアの構築には大賛成ですが、介護付きホームの経営者として、我々の役割、位置づけに危機感を感じています。ケアのプロ集団である私たちが、地域包括ケアの構築において力を発揮できる範囲は広いですし、積極的にその存在感を発揮していかなければならないと考えています。

ーー報酬改定から読み取れるメッセージ、介護付きホームの役割はどこにあると考えますか。

三重野 国は、入院機能を整理・統合し、医療ニーズが高い方の自宅復帰を推進しています。しかし自宅における介護の限界点が上がっても独居高齢者の看取り、認知症高齢者の生活継続など、病院と自宅の間には開きがあり、確かなニーズが存在します。今後、自宅で要介護者の生活を支える仕組みが発展しても、要介護者の心身を「元気にする」レベルのケアが提供できるのは、介護のプロが集結した私たちだと言えるようにならなければなりません。

「高機能の在宅」であり続けることが私たちの存在価値だと考えています。

ーーレベルの高いケアを提供するために、人材教育や定着についてはどのように取り組んでいらっしゃいますか。

三重野  個別ケアの推進は、一方で密室介護になりやすく、統一したケアの提供がされているかわかり難いという問題点もあります。そこで、介護プロフェッショナルキャリア段位制度を取り入れ、全スタッフのレベル認定を目指し、基礎介護を振り返っています。新人にはトレーナーをつけ、しっかりしたフォロー体制を敷くことで、離職者の4~5割を占めていた勤続1年未満のスタッフの離職防止にも効果が出始めました。

ーーありがとうございます。最後に、経営や事業構築に取り組む中で大切にされている言葉があれば教えてください。

三重野 「信頼される安心を、社会へ。」というものです。セコムグループが掲げているスローガンです。私たちアライブはこの中の重要な要素として、高齢になっても安心して暮らせる社会・日本を創るという思いで取り組んでいます。

また、東京大学が高齢社会の課題解決を導く研究を目指し2006年に設置したジェロントロジー寄付研究部門を設置した際、小宮山宏総長が、「超高齢社会を世界で初めて迎える日本は、不安と不幸になるような論調が多い。でもこの大きな課題に日本が最初に立ち向かう。そして、高齢になっても幸せに暮らせる国にする課題解決先進国ニッポンを目指そう」と発言しましたが、私が携わっている介護事業の意味に広がりを感じた瞬間でした。

今、介護業界ではエビデンスやアウトカムが求められるようになり、ロボットやICTといった技術の参入も進みつつあり、質の向上と負担の軽減の双方を求められています。

この大きな課題を解決し、ご入居者を元気にし、スタッフが誇りを持って働き、最期まで幸せに暮らせるホームを、地域を、国をみんなで作っていきたいです。

三重野真