介護の未来を切り拓く、
新生アライブの挑戦。
1アライブの低迷と再生。
人を資本とした
ウェルビーイング経営へ。
慢心と油断が招いた、
アライブの低迷。
おかげさまでアライブは現在、大変良い状態で経営・ホーム運営を行えております。まずは、私たちを日頃から応援してくださっている皆様に、感謝申し上げます。しかし、ここまでの道のりは決して順風満帆ではありませんでした。アライブは2014年頃から低迷を始め、そこへ世界的なコロナの流行も。コロナ禍で、介護業界は軒並み打撃を受けましたが、それにも増して私たち自身の中にあった問題が原因となり、この5・6年はアライブにとって非常に苦しい時期となりました。
創業期の私たちは、情熱に満ち溢れていました。社員一丸となって創り上げたアライブが社会から認められ、有名雑誌にも取り上げられ、一時の成功を収めました。しかし、いつしか慢心し、マンネリとなり、油断し、驕り、妥協するように。やがては諦め、変化することを恐れ、内部の人間関係も悪化。様々な負の要因が積み重なった結果、2017年・2018年・2019年には、3期連続の営業赤字を出してしまうほど衰退していました。
そうした中、2021年に私は社長に就任しました。新卒採用でアライブに入社し、介護の現場で14年働き、いくつかのホームでホーム長を経験。そして、本部へ異動して10年。2021年6月、現場叩き上げの社長として、私に課せられた使命は、「アライブの再生」でした。
ゼロから、アライブを
創りなおす覚悟で。
当時の私は、介護の現場には詳しくても、社会のことにはまだまだ疎く、自分に足りない部分を補うために貪欲に学んでいました。また同時に、現場で感じていた介護の価値や大切にすべきこと、現場の声をステークホルダーまで届けるのが難しいという局面にも立たされ、悩んでいました。その時に出会ったのが「ウェルビーイング経営」という考え方でした。
すべてがトップダウンで決められるピラミッド型の組織で、株主だけを見ていた資本主義経営からの脱却。ビジョン・ミッション・バリューを皆で共有し、株主だけでなく、お客様、社員、パートナー企業、地域コミュニティ、そして社会、6方を見つめた経営へ。お客様に対して何ができるのか、働いている社員に対して何ができるのか。医師や薬剤師、食事を提供してくださる方々などパートナー企業と何ができるのか。地域の中で私たちがどんな役割を果たせるのか。そして、社会に対して何を還元できるのか。こうした視点で企業経営を行うという考えに深く共感し、介護業界こそ正にそうあるべきだと思い、アライブに取り入れることを決断しました。
「人を大切にする気持ち」から、
すべてを始める。
そして、経営陣から現場のスタッフまで全員で話し合い、アライブのビジョン・ミッション・バリュー(VMV)を制作しました。私たちの根幹をなすバリュー(価値観)は「“人を大切にする気持ち”をベースに、お一人おひとりと向き合いつづける。」ということ。この「お一人おひとり」とは、ご入居者やそのご家族のことだけを指しているのではありません。アライブで働くスタッフ、一人ひとりのことも指しています。内側から崩れたアライブだからこそ、「人」を主軸に置き、スタッフたちの幸福を重視した「ウェルビーイング経営」へと大きく舵を切ったのです。
ウェルビーイング経営を実現し、新たな提供価値を持ったアライブのネクストステージ、「アライブ2.0」へと進むために、私はこの変革にかける思いを必死にすべてのスタッフへと伝えていきました。「私たち自らが幸せでなければ、ご入居者やご家族を幸せにすることはできない」という信念を持って、一人ひとりと真剣に対話しました。また、同時に現場にもメスを入れ、環境から人材まですべてを見直し、再び社員一丸となってこの難局に挑みました。そして、語り尽くせぬ困難を皆で乗り越え、2023年度には大幅な業績回復を達成することができました。さらに2024年、朝日新聞杯「ウェルビーイングアワード」のファイナリストも獲得することができました。
スタッフたちの幸福を高める取り組みは、今もなお継続と発展を続けています。長年、介護業界が抱える労働環境の問題や介護士たちの心の闇を見てきたからこそ、強い思いで臨んでいます。処遇の改善や福利厚生の充実(地位財)への投資はもちろん、心身の健康や仲間との絆、仕事へのやりがいなど(非地位財)を高めるための取り組みも怠っていません。共に歩むスタッフたちこそ、アライブの財産。「人を大切にする気持ち」を貫き、これからもスタッフ一人ひとりと真摯に向き合い続けていきます。
今私は、皆様に「アライブのファン」になっていただきたいと思っています。これから出会うお客様、今は他所で働いているスタッフ、パートナー企業や地域の方々が、アライブの魅力に惹かれてやってくる。応援したい、共に働きたい、と言っていただける存在になりたいと思っています。
2アライブが始めた
新たな取り組み。
目指すは、地域に愛される
「街一番の介護屋」。
大学教授や専門家など、
パートナーとの
さらなる協業へ。
大変ありがたいことに、アライブのパートナーとなってくださる方々が今続々と増えています。例えば認知症の分野では、順天堂大学医学部附属順天堂医院、認知症疾患医療センターでセンター長を務めておられる、本井ゆみ子教授。そして、認知症専門医として著名な、東京慈恵会医科大学の繁田雅弘教授。お二人から認知症について学ぶと共に、アライブとの共同プロジェクトもスタートさせています。これは、「認知症を熟知する」という私たちのビジョンを実現するための大きな力となることでしょう。
また、幸福学の第一人者であり、ウェルビーイングの権威でもある、慶應義塾大学の前野隆司教授と奥様のマドカ様は、アライブの顧問となってご尽力くださっています。他にも、薬・食事を一貫体制で担ってくださっているセントラル薬局グループの代表、田中宏和氏。旅行へ行きたいというご入居者の思いを一緒に叶えてくださっている、トラベルドクターの伊藤玲哉先生など、私たちの思いに共鳴してくださった方々とのご縁により、様々な取り組みが始まっています。
人員削減を目的としない、
アライブならではのDXを。
今話題になっている介護現場のDXについても、アライブは先進的な試みを始めています。私たちが目指すDXは、一般的に言われている「効率化による人員削減」が目的ではありません。カメラのセンシング技術、AIによる転倒防止やBPSDの予知など様々な研究を行っていますが、あくまでも目的はケアの品質向上です。人間の目では見逃してしまう小さな変化をも捉えることで、より安全で確実なケアを実現していくことを目指しています。人員は決して減らさず、DXによって生まれたゆとりで、さらにご入居者やご家族の真の望みに応えて参りたいと思っています。
地域の方々に信頼され、
必要とされる存在に
なるために。
アライブはこれから、「片道30分で行ける、街一番の介護屋」になりたいと考えています。ご入居者だけでなく、地域の困っている方々にもアライブのケアを届けたい。そこで、現在はショートステイサービスも提供しています。これは、介護付きのホテルのようなもので、要介護度に関わらず、1日からご利用いただけます。介護レベルが重度の方を短期間でも受け入れるというのは、非常に難易度の高いことです。それでも、介護に疲れたご家族の休息のためや、自宅療養中でも専門的なリハビリを必要とする方々のために取り組んでいます。リピート率が高く、多くの方がその後に本入居を望まれることから、このサービスが如何に必要とされていたかを実感しています。
さらに今、「ターミナルケア」への対応も進めています。終末期の方をお迎えすることは決して簡単ではありません。特に末期ガンの方に対しては、疼痛コントロールが不可欠であり、そのためにホーム内に訪問看護ステーションを設け、緩和ケアの資格を持った特定看護師を常駐させる体制を準備しています。アライブの各ホームが、片道30分=約3km圏内に介護・看取り・医療を提供し、苦しむ方々を支援する場となり、ホームの外にも貢献していくこと。「この世界から、介護で苦しむ人を無くしたい」、その一念が私たちアライブを突き動かしています。
3アライブのさらなる挑戦。
地域、日本、世界の介護に
貢献していく。
「人間力」を磨き、
地域の子どもたちへ還元する。
私たちが追求し続ける、ご入居者やご家族の「真の望み」。それは、決して特別なものではありません。お一人おひとりにとっての、何でもないけれどかけがえのない時間を、共に育んでいくということ。しかし、それだけに難しいのです。その方がこれまでどう生き、どう苦しんで来られたのか。人生を終えようとされている中で何を思い、最期までどう生きたいと思っているのか。その方の人生に思いを馳せ、共感し、寄り添い続けなければ決してできません。だからこそ、アライブはスタッフ一人ひとりの人間力を高めることに力を注いでいます。私をはじめ、アライブで働くすべての者が知、情、意をバランス良く高めている「完き人」を目指して、自らの心を磨くための様々な取り組みを行っています。
現代の人たちは、学校などで哲学や道徳といったものをほとんど学ばずにきました。学力を伸ばす場はあっても、人間力を伸ばす場は少ない。だとすると、アライブで実証した人材育成プログラムを地域の子どもたちに還元できれば、子どもたちの人間力育成に貢献できるかもしれない。その第一歩に、ホームの一部を利用した「子ども食堂」の構想も進めています。子どもから、そのお父さん、お母さん。そのまたおじいちゃん、おばあちゃん、全部がつながり、それを私たちアライブが見守る。そんな未来も遠くないと考えています。
海外人材を育成し、
世界の介護問題にも貢献する。
日本の高齢化は止まりません。2030年には国民の4人に1人が65歳以上の高齢者となり、その5人に1人が認知症患者になると言われています。アライブのご入居者の平均年齢は90歳くらいですが、日本の100歳以上人口は2000年に1万人だったところ、2020年には9万人を超えました。また、日本を追うように、世界の国々も高齢化へ。そうなれば介護の人材不足は、ますます深刻化することが目に見えています。日本だけでも、2040年度には約69万人も不足するという試算まであります。アライブはその問題にも、一石を投じる試みを始めています。
それは、海外人材の確保です。インド政府と連携し、インドの若く優秀な人材をアライブが育成し、採用するというもの。若者たちの渡航や研修にかかる費用はインドのスカラーシップで賄えるため、すべて無料。これは、日本をはるかにしのぐ格差社会に生きるインドの人々に対しても、就労・教育支援になります。アライブで介護のプロとなり、経験を積んだ人材たちが、やがて日本を飛び出してインドや世界中で活躍してくれたら、世界の介護問題にも大きく貢献できると考えています。
これからも、ご入居者やご家族の
真の望みと向き合いながら。
スタッフたちの幸福を真摯に考えながら。
ホームの垣根を越え、
地域の介護から日本の介護、
ひいては世界の介護を牽引する覚悟で
活動して参ります。
新生アライブに、どうぞご期待ください。