2025年11月19日
いつもありがとうございます。アライブ世田谷下馬のホーム長、柴田です。
介護福祉の現場を最も困難に、そして最も深く豊かにしてくれるのは、認知症ケアの在り方だと感じます。
これまでの介護人生の中で、難しさを感じるのも、やりがいを覚えるのも、いつも認知症をお持ちの方との関わりでした。
ご入居者の記憶や見当識の途切れ目を、その方の認知課題に適したケアで丁寧に繋ぎ合わせ、
安寧な生活へと紡いでいく。そんな支援を日々心掛けています。
アライブでは、現場経験に加えて、外部の専門家との協働を積極的に取り入れています。
2023年より日本認知症ケア学会の高澤様と共にケーススタディを重ね、
現理事長である繁田先生からは学会発表に向けた助言を頂いています。
そして今年からは、認知症医療において、かの有名な元和光病院院長の今井先生を顧問にお迎えすることができました。
三名の先生方から学び受けた最も大切なことは、
「ご本人に対して誠実である」ことです。
今井先生に初めてお会いする直前、私はA様というご入居者への対応に悩んでいました。
A様は「家に帰らなければ」「妻が待っている」と強い思いを胸に、何度も居場所を探して歩かれる方でした。
私は“帰りたいお気持ち”を否定せず、受容と傾聴を大切にして寄り添っていたつもりでした。
しかし今井先生は、私の説明を聞いたあと、静かにこう仰いました。
――「ホーム長の介護は優しいけど、その方から信頼はされないよ」。
その言葉が胸に突き刺さりました。
私は実際に家へお連れしていない。つまり、ご本人からすれば“約束を果たしていない”。
困りごとに本気で向き合い切れていなかったのです。
今井先生は、「A様の今の住まいはここです」と優しくも正しく伝わるための対話、
そしてそう感じてもらえる環境やホームの心作りこそが“誠実なケア”だと教えてくださいました。
この言葉をきっかけに、スタッフで話し合いと振り返りを重ね、誠実さを見つめ直しました。
その積み重ねの中で、A様の“帰りたい”という訴えは、今では少しずつ穏やかに変化しています。
生きた学びとして、私は今、次のような場面にも迷い少なく関われるようになっています。
B様が「さっきまで娘がいたの。どこに行ったのかしら」と不安そうに探されていました。
私は『ここはB様のお住まいで、お嬢様は今ご自宅にいらっしゃいます。今日はお越しではないですが、しばらくお会いできないと寂しいですよね』と、真実をやわらかく伝える会話を意識します。
また、C様からは「リビングであの方の大きな声が気になって落ち着かない」との訴え。
私は『驚かれましたね。その方も、お一人不安なお気持ちがあるのだと思います。
C様とその方が安心して過ごせるよう、私たちも支援の工夫を繰り返しますね』とお伝えしました。
双方の尊厳を守ることも、誠実さの一つの形だと思っています。
誠実な介護とは、ただ一生懸命に頑張ることではありません。
学びを取り入れ、実践し、間違いに気づいたら謙虚に省みる。
一つの正解に固執せず、多くの答えと可能性を探し続ける姿勢です。
そして、毎日の感情にしっかりと向きあうことこそが尊厳を守る事であると教えられました。
アライブ世田谷下馬は、これからも“誠実なケア”の深みを追い求め、嘘をつかない認知症ケアを突き詰めて、
ご本人の尊厳に真摯に向き合うホームを目指し続けます。




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