2026年3月21日
平素よりアライブ目白の運営に、深いご理解と温かいご協力を賜り、心より御礼申し上げます。
ホーム長の柳町です。
朝には、独特の静けさがあります。
まだ一日が形を持つ前の、
少し曖昧な時間です。
居室のドアをノックすると、
その方は穏やかな表情でこちらを見て、こう言われます。
「……どちらさまでしたか?」
警戒ではありません。
困惑でもない。
ただ、静かな確認のような口調でした。
私は名乗ります。
「おはようございます。柳町です」
その方は小さく頷きます。
「ああ……そうでしたか」
このやり取りは、ほぼ毎朝繰り返されました。
翌日も。
また同じ問い。
「……どちらさまでしたか?」
その方は、私の名前を覚えておられません。
それでも、声をかければ視線が合い、近づけば身体がほどける。
介助の手も、自然に受け入れてくださる。
ある朝、私はいつものように名乗りました。
「柳町です」
するとその方は、少し笑われました。
「……名前は覚えられないんだけどね」
そして続けて言われました。
「でも、あなたは“朝の人”でしょう」
その言葉を聞いたとき、
私は少し驚きました。
名前ではなく、
肩書でもない。
その方の世界の中で、
私はどうやら「朝」と一緒に残っていたようでした。
名前を覚えていただけなくても、
私はその方の朝の中にいたのだと思います。
ドアをノックする音。
カーテン越しの光。
そして同じ言葉。
「おはようございます。柳町です」
それから私は、
その言葉を少し大切に言うようになりました。
自己紹介というより、
朝の合図のようなものとして。
今日もドアをノックすると、
やはり同じ問いが返ってきます。
「……どちらさまでしたか?」
私は同じ言葉を返します。
「柳町です。おはようございます」
窓の外の光は、毎朝少しずつ違います。
昨日と同じ朝はありません。
だからこのやり取りも、
続いているというより、
毎朝あらためて始まっているのかもしれません。
今日もまた、私はドアをノックします。
すると、少し間があってから
静かな声が返ってきます。
「……どちらさまでしたか?」
もしよろしければ、
こうした朝が静かに始まる場所を、見にいらしてください。
皆さまとのご縁を、心よりお待ち申し上げております。




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