2026年4月30日
平素よりアライブ目白の運営に、深いご理解と温かいご協力を賜り、心より御礼申し上げます。
ホーム長の柳町です。
午後の廊下を歩いていると、
ときどき、風の通り道のような場所があります。
窓と窓のあいだ。
角をひとつ曲がった先。
光が少しだけやわらかく落ちて、
空気の流れが、目には見えないままそこに触れていく。
ある日、
お客様がその場所で足を止められました。
散歩の途中でした。
急いでいるわけではありません。
どこかへ向かわなければならない時間でもない。
ただ、
歩いて、止まって、
少し外を見ておられました。
窓の外には、
大きな景色があるわけではありません。
道があり、
植え込みがあり、
木の葉が風に揺れている。
それだけです。
けれど、その方は
そこにしばらく立っておられました。
職員が「気持ちいいですね」と声をかけると、
その方は小さく頷かれました。
「うん。ここの風は、急がないの」
私は、その言葉も好きでした。
風のことを話しているだけでは、
ないように思えたからです。
日々ご一緒していると、
同じ言葉がもう一度出てくることがあります。
ひとつ前のことが、少し遠くなってしまうこともある。
こちらの段取りとは別のところで、
その方の時間が流れているように感じることがあります。
そういうとき、
私たちはつい、先回りしたくなります。
急がせようとしているつもりはなくても、
早く伝えたくなる。
早く整えたくなる。
早く安心していただきたくなる。
けれど、安心には、
それぞれの届き方があるのだと思います。
その方は、
ただ風にあたって、
立ち止まって、
ひとこと、そう口にされただけでした。
けれど私は、
そのひとことの中に、
暮らしにとって大切なことが含まれているように思いました。
急がない風。
急がせない場所。
できることを増やすこと。
安全を守ること。
体調を整えること。
どれも大切です。
けれど同じくらい、
その方の歩幅に、
こちらの都合を重ねすぎないこともまた、
暮らしを支えることなのだと思います。
その日、
その方はしばらく窓辺に立ったあと、
何事もなかったようにまた歩き出されました。
職員も隣で、
同じ歩幅でついていきました。
たったそれだけの午後です。
あとから振り返れば、
印象に残るのは出来事ではなく、
あの場所に流れていた空気のほうです。
何かを強く印象づけるわけではない。
特別に感動的でもない。
ただ、
急がせない空気がある。
それだけで、
人が少し安らぐことがあります。
午後の廊下には、
今日もまた、やわらかな風が通ります。
立ち止まる方がいて、
その隣に、歩幅を合わせる誰かがいる。
この場所のことは、
そういう光景の中で伝わっていくのかもしれません。
皆さまとのご縁を、心よりお待ち申し上げております。




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