2026年5月18日
皆様こんにちは。
アライブ世田谷中町ホーム長の厚地です。
やわらかな日差しが心地よく、過ごしやすい季節となりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。
今回は、私たちスタッフにとっても大変嬉しく、心温まる出来事についてお話しさせていただきます。
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『いらっしゃいませが、お帰りなさいませに』
A様の奥様がアライブ世田谷中町へご入居されたのは、一昨年の7月のことでした。
ご自宅もお近くで、A様は毎日のようにホームへ足を運ばれ、奥様と穏やかな時間を過ごされていました。
もともとお二人は長年、ご自宅で支え合いながら生活をされていました。
しかし一昨年、奥様がご自宅で転倒され、頭部を強く打たれたことで状況が大きく変わります。
幸い大きなお怪我はありませんでしたが、その後少しずつご様子に変化が見られるようになりました。
お食事が進まなくなり、これまでご自身でできていたことが難しくなり、歩行も困難に。日常生活全般にお手伝いが必要な状態になっていかれました。
原因ははっきりとは分からないままでしたが、ご自宅でお二人だけの生活を続けることは難しくなり、リハビリも兼ねて介護老人保健施設へ入所されることとなりました。
その後、奥様は少しずつ回復され、お食事も介助のもと召し上がれるようになり、ご状態も徐々に良い方向へ向かわれていきました。
そしてその間も、A様は毎日欠かさず面会へ通われていました。しかも、ご自身で車を運転されて。
その後、奥様が中町へご入居することになり、お二人にはお子様はいらっしゃいませんが、近くには姪御様がいらっしゃり、お二人の今後を大変心配されていました。
特にA様の運転については強く案じておられ、
「入居されたら、どうか車では来ないよう叔父に伝えてください」
と私たちにもお話しくださいました。
そのため、ご入居前日に私からA様へ、
「明日はホームからお迎えに伺います」
とお伝えしておりました。
A様も、
「それじゃあ、よろしくね」
と笑顔でお返事くださいました。
しかし翌日、エントランスへ目を向けると、そこにはいつものようにご自身で運転されて来られたA様のお姿がありました。
「A様、お迎えに伺うお約束でしたよね」
とお声掛けすると、
「いやいや、車があるからね。わざわざ迎えなんて申し訳ないよ」
と穏やかに笑われました。
私もあらためて、
「姪御様もご心配されていますので、次回はぜひお迎えに行かせてください」
とお伝えすると、
「そうかぁ。それじゃあ仕方ないね」
と仰ってくださいました。
ですが、その翌日も、さらに翌日も、A様は変わらずご自身で運転され、奥様に会いに来られました。
もちろん安全面への心配はありました。しかし毎日同じ時間に訪れ、奥様の隣に座り、優しく声を掛け続けるA様のお姿を見ていると、
次第に私たちの気持ちは「運転をやめてください」ではなく、「どうか安全に来ていただけますように」へと変わっていきました。
以来、毎日のように交わされる言葉があります。
「こんにちは、いらっしゃいませ」
「こんにちは。今日もお世話になります」
そんなやり取りとともに、A様ご夫妻の新しい生活が始まりました。
A様は毎日夕方になるとホームへ来られ、リビングで奥様の隣に腰掛け、楽しそうにお話しをされます。
そして奥様の夕食介助まで自然に手伝ってくださっていました。
もちろん、私たちがお願いしたわけではありません。
「これくらいやらせてよ。いつもありがとうね」
そう仰りながら、当たり前のように奥様を支えておられました。
そのお姿は本当に自然で、長年寄り添ってこられたご夫婦の深い絆を感じさせてくださいました。
実は、奥様のご入居相談の際、姪御様からは「できればA様もご一緒に」とのお話しもいただいていました。
私たちも同じ想いでしたが、A様ご自身には「まだ一人で大丈夫」というお気持ちが強く、なかなかお話しを進めることができませんでした。
しかし、日々ホームへ通われる中で、A様から時折こんなお言葉をいただくようになります。
「僕もそろそろお世話になろうかと思ってるんだけど、部屋ある?」
A様は以前から脊柱管狭窄症を患っておられ、「腰が悪くてね」とお話しされることも増えていました。
その都度、ご入居についてご説明をさせていただくのですが、翌日には、
「そんな話したかな?」
と笑われることもあり、なかなか具体的には進みませんでした。
それでも私たちは、「ぜひ奥様と一緒に過ごしていただきたい」という想いを持ち続けていました。
そこで昨年末、「年末年始をご一緒に過ごしていただけたら」と、一泊二日のショートステイをご提案しました。
お部屋は奥様のお隣をご用意し、ホームでの生活も体験していただきながら、今後につながるきっかけになればという願いを込めて準備を進めました。
迎えた12月31日。
A様はいつものように車で来訪されました。
「お待ちしておりました。どうぞ奥様とごゆっくりお過ごしください」
とお伝えすると、
「ありがとうね。でも、やっぱり泊まらず帰りますよ。また明日も来るしね」
と笑顔で仰いました。
一瞬驚きましたが、無理強いはできません。
そこで翌日の元旦、お昼前に来ていただき、お二人だけでゆっくりおせち料理を召し上がっていただく時間をご用意しました。
元旦当日。
別室で並んでおせちを囲まれるお二人の姿は、とても穏やかで温かな時間でした。
帰り際、A様は、
「今日は本当にありがとうね。良い新年が迎えられました」
と嬉しそうにお話しくださいました。
そんな日々を重ねる中、ある日A様から、
「5月で85歳になります。僕もホームでお世話になろうと思います。よろしくお願いします」
というお言葉をいただきました。
私たちは驚きと喜びでいっぱいでした。
そして、その日を境に、A様のお帰り際の言葉も少しずつ変わっていきました。
これまでの、
「いつもありがとうございます。それでは失礼します」
から、
「これから僕もお世話になります。それじゃあね」
へ。
その変化に、私たちも「今回は本当にご決断されたのだ」と感じていました。
そして迎えたご入居当日。
今回も事前に「ホームからお迎えに伺います」とお伝えしていましたが、ご自宅でお会いするまでは、どこか半信半疑な気持ちもありました。
ですがその日、A様はご自宅の玄関でしっかりと私たちを待っていてくださいました。
そして穏やかな表情で、
「今日から、よろしくお願いします」
と仰ってくださいました。
その瞬間、本当に胸が熱くなりました。
A様が奥様を想い、毎日通い続けてくださったこと。
そして、その中でスタッフの関わりやホームでの暮らしをご覧になり、
「ここなら安心できる」
そう感じていただけたのだと思っています。
これからもA様ご夫妻が、いつまでもお元気に、そして笑顔でお過ごしいただけるよう、私たちは精一杯お手伝いしてまいります。
またA様には、これまでと変わらず、ご自身のペースで外出されたり、ご自宅へ戻られたりしながら、
“その方らしい暮らし”も大切にしていただきたいと思っております。
そしてこの日から、私たちの言葉も変わりました。
「いらっしゃいませ」ではなく、
「お帰りなさいませ」に。




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