2026年6月9日
平素は格別のご厚情を賜り、心より御礼申し上げます。アライブ浜田山ホーム長の稲田です。
今回は、他社の有料老人ホームからアライブ浜田山へ転居されたご入居者のお話をご紹介いたします。
私がアライブ浜田山に着任して間もない頃、ご家族よりご入居のご相談をいただきました。
その方は、ご自宅から近く、以前ショートステイを利用されたことがあったという理由から、他社の有料老人ホームへ入居されていました。
しかし、ご入居後は他のご入居者やスタッフとの交流が少なく、次第にご自宅へ帰りたいという思いが強くなっていかれました。
また、食事を召し上がらない日が増え、血圧が高いことを理由にアクティビティへの参加も制限され、活動量が低下。夜間の不眠も続いていたそうです。
さらに、ホームへの不信感から血圧のお薬も拒否されるようになり、往診医からは拒薬や食事摂取低下を理由に精神科受診を勧められたことが、ご家族が転居を決断されるきっかけとなりました。
前ホームからの情報では、「認知症があり、問題行動が見られる方」と伺っていました。
お世話好きなご性格から、他のご入居者の医療機器に触れてしまったことや、一時的に所在が分からなくなったこともあったとのことでした。
そのため、当ホームでも受け入れに際し、改めて館内の安全確認を実施し、受け入れ体制を整えました。
ご相談を受けた後、当ホームのケアマネジャーが前ホームを訪問し、ご本人にお会いしました。
しかし、実際にお話しした印象は「とてもお話好きな方」であり、事前に伺っていた「問題行動がある方」という印象とは大きく異なっていました。
そこで、多職種によるカンファレンスを実施し、受け入れ後の支援方針を検討しました。
私たちが大切にしたのは、「とにかく関わること」です。
スタッフ全員が積極的に挨拶や声掛けを行い、ホームやスタッフに慣れていただくこと。
そして、ご本人の行動の背景や思いを理解することから始めようと考えました。
転居当日、ご本人は笑顔で来館されました。
アライブ浜田山自慢の中庭の植栽を気に入ってくださり、アクティビティにも参加されました。
しかし、ひと段落すると、「じゃあ、そろそろ帰ろうかしら」と荷物をまとめ始められました。
「どちらへ帰られますか?」とお聞きすると、
「家に。お父さんが待っているから」
とお話しくださいました。
このような場面で、何が正解なのかは今でも分かりません。
ただ私は、できる限り事実に反することはお伝えしないよう心掛けています。
その時、周囲のスタッフが「こちらで少しお話ししませんか」「お茶でもいかがですか」と自然に声を掛けました。
私も「今日はおいしい夕食をご用意していますので、ゆっくりしていってください」とお伝えすると、再び会話を続けてくださいました。
しばらくすると、また「そろそろ帰ろうかしら」とおっしゃいます。
その都度お話を伺い、気持ちに寄り添いながら関わりを続けているうちに、気が付けば夕食の時間となり、夕食も満足そうに召し上がっておられました。
夕食後にも再び「そろそろ帰ろうかしら」とお話しされましたが、
「外も暗くなってきましたので、今日はゆっくり休みましょう。お休みの準備をお手伝いしますね」とお声掛けし、お部屋へご案内しました。
転居初日でお疲れだったこともあり、その日はすぐに入眠されました。
その後も「そろそろ帰ろうかしら」というお言葉は度々聞かれましたが、私たちは繰り返し丁寧に応対を続けました。
興奮されることもなく、穏やかに過ごされていました。
また、お世話好きなご性格から、車いすをご自身で操作されている方を見ると、「手伝ってあげる」と声を掛けられることもありました。
その際はスタッフが間に入り、安全に配慮しながら対応を続けてまいりました。
そして、ご入居から約3か月が経過した現在。
ご本人は他のご入居者やスタッフとの会話を楽しみながら生活され、「もう帰るわね」とおっしゃる時の“帰る場所”は、ご自宅ではなく、ご自身の居室になりました。
結果として、事前情報で伺っていたような「問題行動」は見られませんでした。
なぜ前ホームでは馴染むことができなかったのか。なぜ「問題行動」と表現されてしまったのか。
私たちは改めて多職種で振り返りを行いました。
もちろん真実はご本人のみぞ知るところですが、スタッフとの関わりが十分ではなかったのではないか、
ご本人が「したいこと」を「したい時に」行う機会が少なかったのではないか、そのように推察しています。
活発に行動される方の場合、安全確保のためにスタッフが付き添うことがあります。
しかし、ご本人の受け取り方によっては、それが「見守り」ではなく「監視」と感じられることもあります。
「あちらへ行ってはいけません」「ここにいてください」といった言葉も、伝え方によってはご本人の尊厳を傷つける可能性があります。
もちろん、他のご入居者の安全に関わる場面ではスタッフが介入します。
しかし、お世話好きなご性格から、日々の業務を手伝ってくださることも多く、その都度「ありがとうございます」と感謝の気持ちをお伝えしています。
「問題行動」という言葉の捉え方は、人によって異なります。10人いれば10通りの解釈があるでしょう。
だからこそ私たちは、行動そのものを見るのではなく、その背景にある思いや理由に目を向けることを大切にしています。
アライブが目指すのは「街一番の介護屋」です。
在宅介護や施設入居、転居をご検討されている方、介護に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。
私たちは、ご本人、ご家族とともに、その方らしい暮らしとは何かを考え、支えてまいります。




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