2026年8月2日
皆様、こんにちは。
アライブ世田谷下馬ホーム長の柴田です。
今回は、日頃ご家族や求職者の方々からよくいただく「問い」を通じて、
私たちが実践する認知症ケアについて考えてみたいと思います。
ご入居を検討されるご家族からは、認知症ケアについてこのような切実なご不安を伺うことがあります。
「介護を嫌がって怒ることがあるのですが、大丈夫でしょうか」
「家に帰りたいと言って、スタッフの皆さんを困らせてしまわないでしょうか」
「大きな声を出される方や、周囲が困るような行動をされる方はいらっしゃいますか」
また、採用面接の場でも、
「認知症をお持ちの方は、ホームに何名くらいいらっしゃいますか」
「ほかの方のお部屋に入ってしまうような方はいらっしゃいますか」
と、質問をいただくことがあります。
ご家族には「安心して大切な人を任せられるだろうか」という不安があり、
働く側には「自分にしっかり対応できるだろうか」という不安があるのだと思います。
在宅での介護を難しくさせる要因の多くに認知症があることは事実です。
しかし同時に、介護の仕事を最も深く、豊かなものにしてくれるのもまた、認知症をお持ちの方との関わりであると私は感じています。
認知症ケアにおいては、ただ話を合わせることが必ずしも本当の優しさになるとは限りません。
私たちが何より大切にしているのは、取り繕うことなく、優しくも正しく伝わるための「対話」です。
あるご入居者が、
「起こしてほしい。母親の私がしっかりしていなければ」
と、不安から同じ言葉を繰り返されていたときのことです。
入社3ヶ月目の新卒スタッフは、ベッドで横になるよう説得するのではなく、その言葉の背景にある想いに立ち止まりました。
新卒スタッフは、自分を育ててくれた母親への感謝を言葉にし、さらにご本人の娘様もいつもお母様を大切に想われていることをお伝えしました。
すると、ご入居者の表情は少しずつ穏やかになり、最後は安心してお休みになられたそうです。
私は、この関わりの中に、認知症ケアへの問いに対する一つの大切な答えがあると考えます。
説得して納得していただくのではなく、その言葉の奥にある「心(気持ち)」に寄り添うこと。
やわらかくも真実をお伝えしながら、ご本人の尊厳を守ること。
すべての信頼関係は、ここから始まります。
認知症ケアには、もちろん専門的な知識や技術も欠かせません。
しかしその前に、
「この人になら心を開いてもよい」
「ここにいても大丈夫なのだ」
と感じていただけるような関係づくりと、心地よい居場所づくりが何よりも必要です。
私たちはともすると、「認知症」「病気」「要介護度」「介助内容」といった介護プロフィールから、目の前の方を理解しようとしてしまいます。
けれど、その方は「認知症を患っている方」である前に、一人の尊い人間です。
その方がこれまで歩んできた道程を知り、その方らしさを支えることが、私たちの認知症ケアです。
ケアをお受けになる方にも、ケアを提供する側にも、それぞれの感性や感情があります。
その双方の想いを受け止めたうえで、私たちは認知症ケアのさらなる可能性を追求してまいります。
認知症を患ったとしても、その方らしく、豊かに生きることができる。
老いを不安だけではなく、幸福なものとして受けとめられる福祉社会へ。
その一翼を担うための歩みを、私たちはこれからも続けてまいります。




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