2026年9月5日
みなさま、こんにちは。
アライブ世田谷代田ホーム長の渡邉健城です。
以前の記事でもご紹介させていただいた、アライブ世田谷代田のショートステイを繰り返しご利用くださっていたA様。
昨年11月、A様は本入居を決められました。
その時、A様はすでに癌の末期と診断されており、往診医の先生からは
「年を越すことも難しいかもしれない」とのお話を受けていました。
建築家でいらしたA様には、長年ご自身で設計された大切なご自宅がありました。
そして、「人生の最期まで、月の半分はこの家で過ごしたい」というご本人の強い思いがあり、ご家族もその願いを大切にされていました。
そこでA様は、月の半分をアライブ世田谷代田でスタッフのケアを受けながら過ごし、残りの半分をご自宅で、アライブ世田谷下馬の訪問看護の力を借りながら過ごすという生活を始められました。
ご入居当初は、食事も水分もほとんど摂ることができなかったA様。
それでも、ホームで過ごされる中で、少しずつ食事や水分を摂れるようになっていきました。
ある日、お風呂上がりにふと、
「コーラが飲みたいね。」
とおっしゃったことがありました。
その言葉を聞いたスタッフは、すぐにコーラを買いに走りました。
そしてA様は、スタッフが買ってきたコーラを、嬉しそうに一気に飲み干されました。
その姿を見たスタッフにとっても、忘れられない瞬間になりました。
「まだまだ、やりたいことがある。」
そんなA様の思いが、少しだけ垣間見えたような気がしました。
以前の記事でもご紹介しましたが、今年5月には、ストレッチャーでの移動となりながらも、スタッフからご家族へ提案した「ガウディ展」へ、奥様と一緒に出かけることもできました。
病気になる前とまったく同じ生活ではありません。
それでも、その時、その身体の状態でできることを、どうすれば叶えられるのか。
ご本人の「こうしたい」を、ご家族とスタッフで一緒に考えながら過ごしてきた時間でした。
そして7月。
ご自宅で過ごされていたある日、いよいよその時が近づいてきました。
前日の夜、奥様から
「体調が悪そうなので、予定を前倒しして、明日からホームへ戻りたい」
とご連絡をいただきました。
もちろん、ホームはいつでもA様をお迎えできるよう準備は万全です。
翌朝、スタッフがご自宅へお迎えに伺いました。
しかし、ご自身のお部屋がある2階から1階へ降りてくるだけでも、とても大きな負担がかかる状態でした。顔色もみるみる変わっていきます。
往診医の先生からも、
「今の状態では移動そのものが難しいかもしれない」
「痰の吸引も難しくなっており、ホームへ移動しても、できることが限られるかもしれない」
とのお話がありました。
それでも、ご家族の思いは変わりませんでした。
「自宅で看ることが不安です。できるなら、ホームに連れて行ってあげたい。」
その思いを受け、これまで訪問看護で関わってきたアライブ世田谷下馬への転居について、ご相談することになりました。
アライブ世田谷下馬にも急な相談となりましたが、すぐに受け入れの準備を整えてくれました。
「いつも来てくれている看護師さんたちがいるところなら、ぜひお願いしたい。」
ご家族のその言葉を受け、A様は急遽、アライブ世田谷下馬へ移られることになりました。
しかし――。
アライブ世田谷下馬に到着してほどなくして、お別れの時が訪れました。
最期の時間は、ご家族と、これまでA様に関わってきたアライブ世田谷下馬の看護師たちに見守られながら過ごされました。
そしてご家族から、
「最期は、あなた達が周りにいてくれて本当によかった。」
という言葉をいただきました。
後日、私もご葬儀に参列させていただきました。
祭壇の脇には、A様のこれまでの思い出の品々とともに、アライブで過ごされた時間の写真がたくさん飾られていました。
節分の日、鬼に扮したスタッフと一緒に写るA様。
仲の良かったスタッフとのツーショット。
嬉しそうにコーラを飲まれている姿。
奥様と一緒に訪れたガウディ展での一枚。
そこには、病気と闘うA様の姿だけではなく、
笑い、楽しみ、誰かと一緒に時間を過ごした、
一人の「人」としてのA様の姿がありました。
その写真を眺めながら、私たちがA様と過ごしてきた時間は、
決して「介護をした時間」だけではなかったのだと、改めて感じました。
A様の人生の中に、私たちが少しだけ関わらせていただいた。
そして、その時間の中で、A様の「こうしたい」を一緒に考え、できることを一つずつ形にしていった。
それが、私たちの仕事なのだと思います。
「最期が、あなた達でよかった。」
ご家族からいただいたこの言葉は、私たちにとって何よりも重く、そして何よりも嬉しい言葉です。
介護の仕事には、決して派手ではない日々の積み重ねがあります。
食事をする。
お風呂に入る。
誰かと話す。
好きなものを食べる。
行きたい場所へ行く。
笑う。
その一つひとつの「いつもの暮らし」を大切にすることが、その人らしい人生を最期まで支えることにつながっていくのだと思います。
そして、いつか訪れる人生の最期に、
「最期が、あなた達でよかった。」
そう思っていただける存在でありたい。
私たちアライブ世田谷代田は、そこにこだわりたいと思っています。
A様が最期に過ごされた場所には、これまで関わってきたスタッフがいました。
そして、その周りには、ご家族がいました。
「最期は、あなた達のいるところで。」
もしかするとA様とご家族が願っていたのは、そんな安心だったのかもしれません。
A様、本当にありがとうございました。
私たちにとっても、A様と過ごした時間は、これからも大切な思い出として残り続けます。




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