2026年9月4日
皆様、こんにちは。
アライブ世田谷中町ホーム長の厚地です。
厳しい暑さも少しずつ和らぎ、秋の気配を感じる季節となってまいりました。
皆様、いかがお過ごしでしょうか。
今回は、ホームで取り組んでいる「学び」について、お話をさせていただきます。
アライブ世田谷中町では、昨年度よりパートナー企業である
MCS(株式会社メディカル・ケア・サービス)様のサポートをいただきながら、介護・ケアについて学ぶ取り組みを行っています。
今年度で2年目となります。
私自身も昨年度、スタッフと一緒に学ばせていただきました。
介護の仕事に長く携わってきたつもりでしたが、学ぶたびに新しい発見があり、自分自身の未熟さに気づかされると同時に、「学ぶことはこんなにも楽しいものなのか」と改めて感じました。
そして、そこで得た知識を「知識のまま」に終わらせるのではなく、日々のケアにどうつなげていくのか。それこそが、私たちが大切にしていることです。
これまでも、世田谷中町のスタッフは一人ひとりが、ご入居者のことを考えながら、日々のケアに真摯に向き合ってくれていました。
「この方がいつまでもお元気に、その方らしく生活していただくためには何ができるのか」
その問いを持ちながら、食事、水分、排泄、運動、睡眠など、一つひとつのケアに取り組んでいます。
そこに、MCS様から学んだ知識やノウハウを加えることで、これまで行ってきたケアをさらに深く見つめ直し、より質の高いサービスへと磨き上げていく。
それが、私たちの目指している姿です。
介護の仕事は、取り組んだことがすぐに数字や形になって表れるとは限りません。
だからこそ、ご入居者のご状態に変化が生まれたとき、「自分たちのケアが、ご本人の生活に良い変化をもたらした」と実感できることは、スタッフにとって大きな意味があります。
「何となく良くなった」ではなく、
「なぜ良くなったのか」
「何を変えたから良くなったのか」
「同じようなケースでも活かせるのか」
を考えられるようになる。
そうした経験がスタッフ一人ひとりの自信となり、介護のプロとしての成長につながっていくのだと思います。
実際に、ケアについて悩んだ際にも、学ぶ前と比べて物事を多角的に考察できるようになってきました。
介護職だけで答えを出すのではなく、看護職員をはじめとする多職種と、
「なぜ今この状態なのか」
「ほかにできることはないか」と、
より踏み込んだ話し合いができるようになってきたことも、大きな変化だと感じています。
以前、MCS様より、
「介護の基本の基は、その方の居心地の良さである」
という言葉をお聞きしました。
とてもシンプルな言葉ですが、私にとって非常に印象に残っています。
私たちは、つい
「何ができるようになったか」
「どのようなケアを提供したか」という、
支援する側の視点で物事を考えてしまいます。
しかし、本当に大切なのは、
「その方は、今、心地よく過ごせているだろうか」
という、ご本人の視点に立つことではないでしょうか。
その方にとって何が心地よく、何が負担になっているのか。
言葉にならない思いも含めて考え、寄り添い、より良い状態を一緒につくっていく。
私は、そこに「慮る」ということの本質があるのだと思っています。
アライブでは、ケアの一環として、ポリファーマシーの解消や薬物療法の適正化についても積極的に学び、取り組んでいます。
「ポリファーマシー」という言葉を、皆様も一度は耳にされたことがあるかもしれません。
ポリファーマシーとは、単純に「薬をたくさん飲んでいる」ということではありません。
多くの薬を服用することによって、薬同士の相互作用や副作用などが生じ、かえって健康上の問題につながる状態を指します。
一般的には、6種類以上の薬を服用している場合、薬物有害事象などのリスクが高まるとされています。
ただし、ここで大切なのは、薬の数だけを見て判断するものではないということです。
たとえ複数の薬を服用していても、その方にとって必要な薬が適切に処方され、効果が得られ、副作用などの問題がなければ、一概に問題があるとは言えません。
大切なのは、
「その薬は、今のこの方にとって本当に必要なのか」
「薬による効果と負担のバランスはどうなのか」
「その方の生活の質をより高めるために、適切な薬物療法となっているのか」
という視点です。
ホームは、ご入居者にとって「生活の場」です。
だからこそ、病気だけを見るのではなく、その方の生活全体を見ながら、医師、看護職員、介護職員など、多職種で一緒に考えていくことが重要なのだと思います。
私自身、以前の職場でも薬物療法の適正化に関わる取り組みを経験しました。
取り組みそのものには賛成でしたが、一方で、介護職が薬について中途半端な知識を持つことにはリスクもあるのではないか、と感じていた時期もあります。
私たちは医師ではありません。
薬を処方することも、医学的な判断をすることもできません。
だからこそ、介護職が担うべき役割は、薬について独断で判断することではありません。
日々の生活の中でご入居者を最も身近に見ている専門職として、
「最近、少し眠そうにされている」
「以前よりふらつきが増えている」
「食事の様子が変わってきた」
といった小さな変化や気づきを見逃さず、それを看護職員や医師などの専門職につなげていくこと。
そして、専門職と一緒に、その方にとってより良い状態を考えていくこと。
それが、介護職としての大切な役割なのだと思います。
アライブに入職し、世田谷中町のスタッフと一緒に働く中で、その考え方はより確かなものになりました。
スタッフたちは、薬について学ぶことを「薬を減らすため」と捉えているのではありません。
病気や身体の状態、薬の作用や副作用について学びながら、
「どうすれば、この方がより良い状態で、その方らしく生活できるのか」
を考えています。
そして、日々の生活の中で感じた小さな変化を看護職員や医師などの専門職につなげ、一緒に考えていく。
この積み重ねが、ご入居者のQOLを高めることにつながっていくのだと思います。
8月には、ホームで薬についての研修を行いました。
その中で、とても分かりやすい例えがありました。
「薬の多剤使用」を「人間関係」に置き換えて考えるというものです。
・1人(1剤)であれば安定。一人なので他者とのトラブル(副作用)もありません。
・2人(2剤)相性の確認が必要。(薬の合う、合わない)
・3人(3剤)複雑な三者間の力学が生まれます。関係が複雑化、影響が出始めます。
・5人(5剤)5人になると人間関係の組み合わせが一気に10通りになり、ここからトラブル(副作用)が生じやすくなります。
そして6人、7人……と人数が増えるほど、それぞれの関係性が複雑になり、誰と誰の間で何が起きているのかを把握することが難しくなっていきます。
薬も同じように、種類が増えるほど、それぞれの薬がどのように影響し合っているのか、専門的な視点で慎重に確認する必要があります。
人間関係に置き換えて考えてみると、薬の多剤使用について、なぜ慎重に考える必要があるのか、とても分かりやすく感じます。
そして同時に、私たち介護職も、薬について正しい知識を持つことの大切さを改めて感じました。
日々、ご入居者の一番近くにいるのは、私たちスタッフです。
だからこそ、私たちが学び続けることには大きな意味があります。
一つの気づきを看護職員へ。
看護職員から医師へ。
そして多職種で一緒に考える。
それぞれの専門性をつなぎ合わせることで、一人では見えなかったものが見えてくる。
その結果として、ご入居者にとってより良い生活につながっていく。
それこそが、「慮る」ということなのではないかと思います。
今回の取り組みにおいても、私自身、たくさんの新しい発見がありました。
そして何より、スタッフが学び、考え、実践し、少しずつ成長していく姿を間近で感じることができました。
まだまだ私たちにも課題はあります。
だからこそ、昨年度学んだことを今年度さらに磨き、知識として知っているだけではなく、ホームスタッフ全員が実践し、一人ひとりがその成果を「体感」し、「体現」できるところまで取り組んでいきたいと思います。
私自身も、日々の仕事を通して、その意味を実感しています。
学ぶことで自分が変わり、自分が変わることでケアが変わり、ケアが変わることで、ご入居者の生活がより良くなる。
その循環を、これからも大切にしていきたいと思います。
そしていつの日か、
「街一番の介護屋」
と地域の皆様から言っていただけるホームを目指して。
スタッフ全員で学び、考え、実践し、これからも一歩ずつ精進してまいります。




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